欧州におけるBahusとIKEAの竹フローリング動向

欧州の床材市場では、近年竹フローリングへの関心が着実に高まりつつあり、その中心に位置しているのがBahusとIKEAが展開する多様な竹製フローリングである。これらの企業はそれぞれ独自の販売スタイルと品質基準を持ちながらも、欧州市場のニーズに的確に応じることで、竹材の普及に大きく貢献している。ここでは両ブランドの動向と、欧州で求められている仕様や品質傾向、さらに産地側の工場技術者として感じる市場の変化などを交えて整理する。

まず、Bahusは北欧を中心に展開しており、竹フローリングを床暖房対応、ワイドプランク、耐摩耗コーティング強化といった機能性重視のラインナップで展開している印象が強い。特にバルト三国やポーランドなど、寒冷地域での床暖房対応需要が旺盛な市場では、寸法安定性の高い竹材は評価が高い。Bahusが取り扱う竹フローリングは、ストランド仕様が主力になっており、密度コントロールの均一性や表面硬度の高さが購入理由として挙げられる。欧州の施工会社からは「施工後の動きが少なく扱いやすい」という声が多く、縦プレスと横プレスをバランスよく揃えている点も市場での安定的な販売につながっている。

一方、IKEAは竹フローリングを手頃な価格帯で提供することで、一般家庭への普及を大きく後押ししている。IKEAの竹床材は、比較的薄めの厚さに設定されていることが多く、量販向けとして生産効率の高い仕様が採用される傾向がある。大量流通に合わせた厳格な品質管理と標準化された生産要求は、工場側にとっては技術的な取り組みを求められるポイントでもある。特に、色差の許容範囲、含水率の安定性、パッケージングの耐久性など、IKEA向け製品では細かな基準が設定されているため、それらを満たすための管理体制が不可欠となる。

欧州市場全体を見ると、竹フローリングの評価ポイントは大きく三つに集約されている。ひとつは寸法安定性で、特に四季の温湿度差が大きい地域では膨張と収縮を抑えることが重視される。ふたつ目は表面硬度で、ペットを飼う家庭や商業空間での使用が増えているため、傷がつきにくいストランド竹が好まれる傾向が強い。そして三つ目は環境配慮で、欧州の顧客はFSCなどの認証への意識が高く、製造工程における環境基準の確認を求められる場面も増えてきている。

BahusとIKEAはこの三要素に異なるアプローチで応えている。Bahusは高耐久性仕様と施工現場の利便性を重視する一方、IKEAはより多くの消費者に手に取りやすい価格と普及モデルを重視している。ただ、どちらも竹材特有の環境価値を前面に出すわけではなく、利用者にとっての実用価値を自然に提示している点が共通している。これは欧州特有の価値観とも言え、素材の環境性よりも「使いやすさ」「扱いやすさ」「品質の均一性」が評価の中心になりやすい土壌に合致している。

工場側の視点では、欧州向け竹フローリングの生産にはいくつか顕著なトレンドがある。まず、濃色処理の需要が緩やかに増えていることである。炭化処理を強めたウォーム系の色調が内装トレンドとして好まれており、BahusとIKEAともに温かみのあるミディアムトーンの比率が上がっている。また、表面仕上げについてはマット系UVコートの採用が圧倒的で、反射を抑えつつ木質感を自然に見せる仕上げが主流だ。光沢の強い仕様は欧州ではやや敬遠され気味で、サテン程度の控えめな光沢が標準になっている。

さらに、溝加工に関しては国によって好みが分かれる。ドイツやオランダでは四方V溝が根強く人気だが、北欧では溝なしを好む層も多い。Bahusはこの地域性に合わせて複数仕様を揃えており、IKEAはグローバル仕様として溝なしを採用することが多い。生産側としては、溝仕様が変わると研磨、塗装、端面処理の工程に微調整が必要になるため、市場の注文に合わせてラインセッティングの切り替えが増えている実感がある。

また、欧州向けでは放射性物質やVOC規制に対する要求が厳しく、特に接着剤の選定は慎重に行う必要がある。ヨーロッパではE1基準が一般的だが、一部の国ではさらに厳しい自主基準を求める顧客も存在する。IKEAのような大規模量販店は、第三者検査機関での定期検査を必須としていることが多く、ロットごとにサンプル提出を求められるケースもある。この点は工場側にとってコストと時間の両面で負担が増えるが、欧州市場の信頼を維持するためには欠かせない工程である。

竹フローリングの構造に関しては、フローティング施工向けのクリックシステム需要が拡大している。特にDIYが浸透している北欧ではクリック仕様が主流になりつつあり、Bahusの製品ラインもクリック比率が増加している。IKEAもクリックを標準化しているため、工場としてはMDFやHDFベースの芯材の品質管理、クリック加工の精度保持が重要なポイントとなる。ストランド竹のソリッド構造よりも積層型の需要が高まり、加工性と安定性のバランスが求められている。

興味深い点として、欧州の顧客企業は竹材の「ストーリー」を求める傾向が以前より強まっている。環境性を過度にアピールするのではなく、どの地域の竹を使い、どのように選別し、どの工程で品質が決まるのかといった、製造過程の実情に対する関心である。これは透明性を重視する欧州市場の特徴でもあり、BahusもIKEAもサプライチェーンの明確化を重視している。工場側にとっては、工程記録、写真資料、原材料ロット履歴などの提示を求められる場面が増えており、製造だけではなく情報管理の徹底も求められる時代になっている。

総じて、BahusとIKEAの竹フローリング動向は、欧州市場の成熟度をよく反映している。高機能を求める顧客層と、手頃さと実用性を求める一般層の両方で竹材が確実に受け入れられており、これが市場全体の安定した需要につながっている。竹材はこれまでニッチな素材とされることも多かったが、欧州ではすでに一般的な床材の一つとして定着しつつある。工場現場においても、欧州向け規格に合わせた生産ラインの改善や品質管理の高度化が続いており、今後もBahusとIKEAの動向は竹フローリング産業全体に影響を与え続けるだろう。